「親から土地を相続したが、
遠くに住んでいて利用する予定がない」
「きちんと管理できず周りに
迷惑をかけてしまう」
「維持管理費の負担の方が大きい」
地方からの人口流出、核家族化、家族の
形が変わり、人口減少により土地需要も
変わっていく中で、せっかく不動産を
相続してもその維持・活用に悩む方が
増えています。
1.「相続土地国庫帰属制度」の創設
人口減少・社会構造の変化に伴い、人々の相続土地への関心も変化。それが管理不全・所有者不明土地を生み、深刻化しかねないことから、今回の相続登記義務化と同時に、相続した土地を手放すための法制度「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
又は遺贈により取得した「土地」について、国に対して負担金を支払って、引き取ってもらう仕組み。墓じまいならぬ、土地じまいのための新制度です。
これまでは不動産を相続した場合、❶自分で活用(住む・貸す・売る等)する、できない場合には手放したいと思っても ❷不要な土地だけでなく、預貯金や株式を含めた全ての資産を相続放棄するしかありませんでしたが、今回、一部の土地だけ手放せる制度が創設されたのです。
管轄法務局に承認申請し、法務大臣による承認を受け、10年分の土地管理費用相当額の負担金を納付することで、土地の所有権を国庫に帰属させることができ、以降は国有財産として管理されます。この制度は既に令和5年4月27日から施行しており、また施行日前に発生した相続についても対象となります。
2. どこまで使える?
ただ、現時点(令和6年2月29日現在)で利用・実施状況をみると、相談件数23,188件に対し、申請件数1,761件、最終的に国に帰属したのが150件となっています。関心の高さに比べて、実際の利用件数が少ないというのはどういうことでしょうか?
実は、この制度はあくまで最終手段。国としても、管理コストや土地の管理を国任せにするようなモラルハザードを懸念して、「一定の要件」を設定しており、それがかなり厳しいものになっているのです。
もし申請を却下されても審査手数料(土地1筆14,000円)は返金されません。利用を検討する場合は、必ず法務局に事前相談し、要件を満たしているのか、具体的な負担金額がどれくらいになるのか、慎重に比較衡量する必要があります。
例えば、次のような場合には認められません。
● 土地の上に建物がある
● 土壌汚染や埋設物がある
● 崖があり(勾配30度以上、高さ5m以上)、管理に過分の費用労力がかかる
● 権利関係に争いがある
● 担保権等が設定されている
● 通路など他人が使用している
● 共有者の協力が得られない
国も管理にコストやリスクが伴う土地を容易には引き受けられない。特効薬は無いのです。
3. 負の財産にしないために
不動産は本来、自分にとって、家族にとって大事な資産であるはずです。自分にとって、限られた財産を今後どう使っていくのか、家族にどうして欲しいのか、そこが十分に共有されないまま、突然介護・相続が生じたときに、家族にとって、不動産が処遇に悩む「負」の財産になってしまう。それは絶対に避けなければいけません。所有者不明土地問題も、公共の問題である以前に、一つ一つの家族の問題、自分ごとなのです。
遺言・任意後見といった法制度による準備を前提に、日頃からキーパーソンと一緒に、現状の把握・共有をし、自宅をどうしていきたいか具体的な話をしていくこと。自分の財産を負の財産にしないために、今回の一連の法改正をきっかけに、改めて自宅の今後のあり方を考え、皆さん自身のこれからの安心へつなげていただきたいと思います。