■さらに2040年、団塊ジュニア世代層(1971年から1974年生)が65歳を超え、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が約35%に達する。この状況下では、現在の医療、介護、年金などの社会保障制度の持続性に対する疑念が指摘されており、2040年問題と言われている。
医療・介護のシステム崩壊が、顕著になってきたと実感しています。病院のひっ迫具合、在宅ヘルパーの人員不足など、見聞きする事が多く、高齢者がピークに達する2040年には一体どうなっているのか、心配になります。
お客様が救急病院に搬送された際、入院手続きや医療同意などで病院の医師、看護師、医療相談員と関わるのですが、病院問わずその余裕のなさに驚かされます。ひと昔前では、「おひとり暮らしだと大変ですよね、準備が整うまでいていいですよ」なんて話はごく普通にあったわけですが、現在では救急や重傷患者受け入れのためにひとつでも多くのベッドを空けなければいけないとのこと。「〇〇日までに退院(転院)してください」とピシャッと言われたご経験がある方も多いでしょう。
もちろん治療行為が終わっているから、救急指定病院だからなどの理由があるわけですが、救急搬送患者数に対して病床数が追い付いていないのが実情(横浜市某病院では救急搬送が約3倍に)です。高齢者の救急搬送が多くなったのも、病床不足に拍車をかけています。
病院勤務の医療相談員である友人は、業務の大半がベッド調整で、「病床数確保が毎日の悩み。患者さん個人と向き合っている余裕がないのが申し訳なく心苦しい」と言っています。
先日、病棟医師がカンファレンスの場で、在宅ケアマネージャーを一喝している場面に出くわしました。「ヘルパーが準備できないから、退院を待ってほしいなんてのは、理由にはならないよ。介護の問題を医療に押し付けないでほしい。こっちはギリギリでやっている。治療が必要な患者を助けられなくなるんだよ」と。対してケアマネージャー。「そう言われても、ヘルパーが足りず、事業所がパンク状態なんです。入院している間に身体機能、認知機能が低下してしまったのだから、施設入所も検討しなきゃいけない。きちんと介護ができる体制ができないまま退院したら、すぐ病院に逆戻りになるんですよ?悪化しながら寝たきりになり命を削っていくんですよ」
このふたりのやり取りが、まさしく2025年問題、高齢者の増加と人材不足、象徴的な論点だなと感じました。
厚生労働省は高齢者の在宅医療システムを推進しています。在宅医療で救急搬送、病床不足を回避させ、また早期退院・在宅医療により医療崩壊、本人の機能低下を防ごうという試みです。そのことについて、先日、神奈川県主催のフォーラムで横浜市の救急病院の医療相談室長とお話しする機会がありました。
「退院のお話をすると、病院は冷たい、家族が対応できない、と叱られることが多くなりました。救急搬送の件数もここ数年で3倍となり、そのほとんどが高齢者というのが現状です。」「病院は急性期病院と、回復期・療養型病院に大別されているのですが、急性期病院での治療が終わっても退院しない、という現状が医療崩壊を招いてしまう大きな要因です。簡単に言うと、急性期の方を受け容れられない、いわゆる救急車のたらい回しを招いてしまい、助けられる命も落としてしまうことになってしまいます。」「高齢者に必要な医療は在宅医療でも十分にまかなえますし、なにより急性期病院での入院環境は、回復期にあるご本人にとっては決していい環境とはいえません。命を救う、病気を完治させることに特化している病院であり、心身のリハビリを期待する場所ではないのです。不必要な入院期間が原因で、寝たきりになる、認知能力が落ちるということが当たり前のように起こりえます。すみやかに在宅医療、または回復期・療養型病院に転院し、心身の回復、低下防止に努めた方が賢明なんです。」
問題は、ご家族が「病院なら安心だ、何でもやってくれる」と誤解している現状にあることがわかります。社会の現状を正確に把握し、何をどうすればいいのか理解する、または理解させてくれる人、相談できる人がそばにいるということが、とても大切です。2025年問題、そして2040年…巻き込まれないようにしてください。
激動の時代にあたり、私たちは社会情勢を見極め、正確な情報をお届けし、ご本人とご家族を守るべく、その対策を皆さんと共に考えます。不安なこと、疑問に思うことがあれば、お気軽にご相談ください。