■換価執行(清算型遺贈)遺言執行者が不動産を売却するなどして、諸経費や債務を引いた残額を受遺者らに分配する方法。適している場合として、①財産の不均衡改善 ②相続人の負担軽減 ③寄付をしたい場合 ④相続財産から税金や債務の支払いをしたい場合、等があげられます。
先日、一人暮らしの男性からの相談を受けました。所有権型の自立型ケアマンションに居住されているのですが、あるお部屋の住人が亡くなり、その方の相続人が不明で困っているというもの。具体的には、管理費と修繕積立金の未収、また残置物の処分等に手出しできないので新居住者が入居する見込みが立たず、いわゆる幽霊部屋になってしまうこと。さらに同様の部屋が沢山有り対応に困っているということでした。
生涯未婚率が30%に迫ろうとしている現在、おひとり様高齢者は劇的に増加しています。ご自身が亡くなった後のことも十分考えて準備しておかないと、残された遺族や周辺の方に多大な迷惑をかけることになります。
例えば、生前に換価執行の旨を記載した遺言を作成し、もしものことがあったら、遺言執行者がマンションを売却し、そこから管理費や修繕積立金などの債務を返済した残額を、指定の方に遺贈したり自治体に寄付をするようにしておけば何の問題も生じません。残念ながら今回のケースは、遺言は作ってあったのですが、単に「遺贈する」記載のみで換価執行の記載も執行者指定の記載も無かったため上記のような手続きが取れず大問題になってしまいました。当該マンションは立地もよく綺麗なのですが、問題が多数ある物件のため販売価格が極端に安くなってしまい債務に満たないという事情もありました。結局弁護士を入れ処理するしかなくなり、マンションの管理組合の負担は更に増してしまいました。
遺言で換価執行の準備をしておけば、マンション以外の財産も含めて総合的に解決に至る可能性が高くなります。大切なのは、問題が生じることを予測し、事前準備を怠らないことです。問題が生じた後では、何をしても所詮対症療法。そこに多大な時間と労力、費用がかってしまうのは、非常に残念な事だと思います。
私たち市川事務所は、激変し続ける時代に適合する準備を提案し続けてまいります。お気軽にご相談ください。