見守りチーム サブ・マネージャー 加賀山知絵

 
最近、お墓を巡る困りごとが増えています。といっても、いつか自分が入る予定の「お墓」の話ではなく、結果的に継承してしまっているお墓、その墓じまいのお話です。背景には、祭祀承継者が決まっていないことや、墓じまいの方法が不明なまま放置されていることがあります。こうした問題は、残されたご家族に大きな負担となってしまいます。

 「いつかは…」と思いながら、つい後回しになりがちな墓じまい。 けれど、いざ動き出してみると、手続きは多く、時間も手間もかかるものです。
 
 私が関わったある事例でも、印象的な出来事がありました。 ある日、お客様のもとに寺院と霊園から管理費・護持費の滞納通知が届きました。「どうしたらよいか」とご相談を受けました。
 まずは寺院と霊園に事情を聞き取り調査。すると、故人が承継していた先祖代々の墓があることが判明。霊園の記録や寺の台帳、実際の墓の状況を照らし合わせ、納骨されている方々を特定した結果、4つの墓に合計17名が納骨されていることがわかりました。
 今後これらすべてを管理していくのは現実的ではないため、お客様は墓を1箇所に統合する決断をされました。 墓石の撤去費用、管理費、名義継承手続き、ひとつずつ丁寧に調査を重ね、最終的に統合先を1つの霊園に決定されました。
 行政手続きも一筋縄ではいきません。改葬許可の取得には多くの書類が必要で、自治体や霊園が代理取得してくれる場合もあれば、自力で集めなければならないこともあります。行政手続きの専門家の力も借りながら、石材店への墓石撤去の依頼、費用の精算、そしてすべてのお骨の改葬を経て、ようやく墓じまいが完了しました。
 少子化の影響もあり、一族の中で「最後に残ったひとり」が墓の管理をするケースは、今後ますます増えていくと感じています。 お墓の管理は、精神的にも経済的にも負担が大きくなりがちです。だからこそ、元気なうちに情報を集め、計画を立てておくことが大切です。
 あるお客様はこうおっしゃいました。 「明日でいいわ、はダメなんだ。先送りにしても大変なだけ。」
 その言葉には、経験からにじみ出る重みがあります。 お墓のことも、将来の財産の引継ぎと同じように、早めに向き合うことで、ご自身にもご家族にも、心のゆとりが生まれます。

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